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たぶんやるよ
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ふと思い立った設定。
異世界ファンタジーというか。
ファンタジーから現代に近づきかけてる時代設定みたいな。
魔法とか、そういったものがなくなりはじめて。
それでも人間は毎日を変わらず生きていく。
国によっては厳しく規制しているけれど、自由なところは本当に自由。
ここから人間たちは神を失うことになる。
信じる偶像は誰だったんだろう。みたいな設定。

そんなに重くはなく。

主人公と古い妖怪の話しみたいな。
主人公はがっつり人間で、平凡な人。
妖怪は現時点ではヌエだけど、もっとしっくりきたら違うのになるかもしれないし
ヌエのままいくかもだし。
そんな話し。
おもいつくままにかけたらいい系とみた。

ははは。

 朝から街は賑やかだった。
 パン屋の娘は今日も焼きたてのパンを店先にばら撒き、店主に大声で怒鳴られている。本人に悪気はないのだろうが、他国から進出してきた有名パン屋に客をとられてしまった店主としては、このパン一つ一つが無駄になるたびに妻や子供と暮らす生活が遠のく思いなのだろう。
 アルバイトの娘は情けない声で謝罪しながら、もう一度パンのトレイをひっくり返した。
 なんて不注意――もしくは不運。
 彼はその光景をしばし見守ったあと、自らの仕事を思いだして足を進めた。
 アステル・ナポス。王陛下に仕える騎士の見習いであり、同時に街一番の踊り子リトスの弟でもある。
 今現在としては、姉の方が有名であるがゆえに、同じ見習いたちだけではなく、先輩である騎士たちにも、リトスの弟。としてしか見てもらえない。
 だからこそ。
 アステルは他の見習いよりもずっと、自らの執務に懸命だった。
 サボりの言い訳に使われガチな城下の見回りも、城内の見回りも、近辺の警護も真面目にこなし、実践訓練ともなれば見習いで彼に勝てる者はいない。
 最近は騎士たちにも余裕で勝つこともあるくらいだ。
 このまま上手くいけば、年内に正式な騎士となって王陛下から騎士の剣と鎧を承ることができるだろう。
 そうすれば、姉ばかりに働かせる事はなくなる。
 アステルは小さく息を吐いた。
「今日も暑くなりそうだな……」
 皮の鎧が臭い。
「おい。アステール」
 呑気な声とともに正面から同じ皮の鎧を身に纏った騎士見習いが駆けてきた。
「どうした?」
「なんかさっき酒場で聞いたんだけど、西の国が一つ滅びたらしいぜ!」
「酒場……」
「すげぇよな。
 戦争とかの気配もなかったのに、朝が来たら全部なくなってたらしいぜ。
 行商人が言ってた」
 まくしたてる見習い仲間。
 空のように澄んだ青い瞳は、好奇心に輝いている。
 だが、それとは裏腹にアステルの目はどんよりとにごっていた。
「おい。
 お前は街の南を警護だったな……」
「そんなことより国消滅だよ! こえーよなー!!」
 アステルは溜息をついた。
 どうやら見回りをサボりの口実として、日常的に使ってるらしい。それどころか全員が全員、同じように見回りをサボってると思いこんでいるようだ。
 こんな姿が上司にバレれば、一発で首が飛ぶというのに。
 もちろん、両方の意味で。
「んでな。
 消滅っていうか焼失らしいんだけどな。城と街のあった場所がまるまる廃墟になるくらいに燃えたんじゃないか。って!
 人間業じゃないよな!」
 そんなことにも気がつかないのか、見習い仲間はぺらぺらとどこから出てくるのか分からないくらいの勢いで喋っていた。最初こそは聞いていたアステルだったが、最早聞く気もしなかった。
 それどころかグーで殴り飛ばしてやりたい気分だ。
「でな!」
「ほーう。
 それは随分と怖い話だなぁ……見習い」
「あ……」
 見習い仲間が小さく声を上げた。
 次いで、アステルが声の主の名を呟く。
「ネフリティスさん……」
「よお、アステル。お前はいつも真面目だな」
 口元は笑っているようにも見える小柄な先輩。
 しかし、その鋭い双眸は一切笑っていないことをアステルは知っていた。
 ネフリティスといえば、騎士の中でも最強の名を欲しいままにしている騎士の中の騎士。戦の少ない現在は、王女の警護にあたっているらしい。
 そんな彼がどうして城下町にいるのだろうか。
 疑問に思ったものの、口下手なアステルには聞けそうにもなかった。
 その間にも目の前で見習い仲間はぐいぐいと締め上げられている。小柄でもネフリティスの力は馬にも勝る。騎士の誰かが呟いていた言葉を思いだした。
 アステルは無言のまま、小さく十字をきった。
「ったく。平和だからってサボっていいわけないだろ。
 これだから最近の若いやつは弱いんだろ」
「若い……?」
 アステルは彼の言葉に首を傾げた。
 ネフリティスも相当に若いと思ったが。見た目は二十代前半にしか見えないし、しかし戦争での戦いを経験しているということは、少なく見積もっても三十を越えている。
 だがとても、四十を越えているようには見えない。
 泡を吹いて気絶している見習いは、二十歳だと言っていた。そこまで年は変わらないだろう。
 なのに若いやつと言い切るとは。
「ネフリティスさんは――」
「アステル。お前ちょっと、森の見回りにいけ。
 俺はサボってるやつシメてくる」
 言いたいことだけ言って、ネフリティスの小さな体は人ごみの中に消えてしまった。
 小ささのあまり、探す気も起きない。
「……まあ。いいか」
 アステルは気を失ったままの見習いが通行人の邪魔にならないよう、道の端へと引きずると何事もなかったかのように歩き出した。
 森とはいえど、四方を森で囲まれた国。
 ネフリティスは全部をまわれという意味で言ったのだうか。そうだとすれば、彼はなかなかに性格が悪い。一人でまわりきった頃には、きっと来年になっている。
 もしくは骨になっている。
「……出世、するぞ……」
 もう一度小さく呟いた。



 森の中。
 倒れている少女がいた。
 血まみれで、生きているのかすら分からない。
 アステルは慌てて駆け寄った。口元に手を当てると、かすかな呼吸を感じる。まだ息はあるようだ。医者に運び込めば助けられる。
 そう踏んだアステルは少女を抱き上げた――
「医者はだいじょうぶ。
 行き倒れただけだから……」
 腕の中で少女が口を開いた。
「しかし」
「水か、風呂を……いただけませんか?」
 血まみれの少女は苦しそうに告げた。
「そんなものでいいのか?」
 アステルの言葉に少女は小さく頷く。
 黒い髪がかすかに揺れた。
「……わかった。お前の言葉を信じよう」
 ゆっくりと歩き出すアステル。
 少女の唇が笑みの形に歪んだのが分かった。
「ありがとう」
「気にするな」
「ねえ。き……あなた、名前は?」
「アステル」
「アステル。
 そう。いい名前ね……うん。いい名前よ」
 口の中で反芻する少女。
 確かに元気はあるみたいだ。だだの行き倒れっていうのも本当かもしれない。
「お前の名前は?」
 たわいもない会話を繰り返しながらアステルは思った。
「ぼく? ……アイオン」
「アイオン……?」
 一瞬、少女が迷った気がした。
 偽名だろうか。
 アステルは不思議そうに少女――アイオンを揺らさないように抱き抱えたまま、細心の注意をはらって歩き出した。
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